Assignment条項の記載例を教えてください

譲渡禁止条項とは

契約上発生する権利の移転、義務の移転、契約上の地位の移転について、相手方の同意なしに行ってはならないことを定める規定です。契約は、通常双務契約であり、一方当事者は他方当事者の力量や資金力、信用力を信頼して、取引関係に入ります。ところが、相手方当事者が契約上発生した権利や契約上の地位を第三者に一方的に移転させてしまうことができるとすると、一方当事者は契約当初に想定していた人と全く違う人を相手に取引せざるを得なくなって不当に損害を蒙ってしまう可能性があります。そこで、契約上発生した権利や義務、契約上の地位について相手方当事者の了解なしに第三者に譲渡したり、移転したりすることができないことを定めておく必要があります。

Assignment条項のサンプル

Neither party hereto shall, without the prior written consent of the other party, assign, transfer, or encumber its rights under the Agreement to a third party, or assign or transfer its obligations to a third party.

(訳)いずれの当事者も、相手方当事者の事前の書面による同意がある場合を除き、本契約書による権利を第三者に譲渡、移転、質入れしてはならず、本契約上の義務を第三者に譲渡又は移転してはならない。

契約上の権利の譲渡と地位の譲渡

契約の譲渡については、契約上の地位の譲渡と契約により生じる個々の権利の譲渡を分けて考える必要があります。契約上の地位については、契約の当事者として債権債務を包括的に有する地位であり、その譲渡は相手方当事者にとって重大な影響を与えることがあります。一方、契約により生じた権利の譲渡については、個別の権利の移転ですので、必ずしも相手方に直接重大な影響を与えることにはなりません。例えば、契約当事者の一方が金融機関からの借入を行うに際して契約により生じた債権を担保として提供するような場合が考えられます。但し、国際契約においては、特に定めがない場合には契約上の地位の譲渡だけでなく、契約に基づき生じた権利の譲渡についても相手方の同意なしに譲渡することが禁止されるのが一般です。将来権利の移転が想定される場合には、権利の移転禁止に一定の例外規定を設けることや、権利移転の同意を不条理に留保することはできない旨を定めておくことも検討する必要があります。

Assignment条項のサンプル

相手方の同意のない権利譲渡は禁止としながら、相手方はその同意を不当に留保してはならない(差し控えてはならない)と規定するパターンです。

No Party shall assign its rights or obligations under this Agreement in whole or in part, without the prior written approval of the other Party, which approval shall not be unreasonably withheld, conditioned or delayed.

(訳)いずれの当事者も、他方当事者の事前の文書による同意(この同意については不合理に留保されたり、条件を付けたり、遅滞してはならない)がある場合を除き、本契約により生じた権利または義務の全部または一部を譲渡してはならない。
 

担保設定を認める条項

契約により生じた権利の譲渡を禁止しながら、例外として金融機関に担保設定することについては認めることを明らかにした規定です。

For the avoidance of doubt, Purchaser may grant security interests in its rights under this Agreement to its lenders.
(訳)疑義を生じないために言えば、買主は、本契約に基づく権利について、貸主(金融機関)のために担保権を設定することができる。

契約の譲渡について一定範囲で例外を認める規定

契約当事者のいずれかについて権利の譲渡がありうることを明確にしておく場合があります。例えばライセンス契約において、ライセンシーによる契約上の地位の譲渡は認めないが、ライセンサーによる契約上の地位の譲渡は認めるというような場合です。下記の事例は、売買契約において売主は契約により生じた権利や契約上の地位の譲渡をすることができることを明らかにしたものです。

Neither this Agreement nor any of the rights or obligations under this Agreement, may be assigned or delegated, in whole or in part, by operation of law or otherwise, by any party hereto without the prior written consent of the other parties hereto, and any such assignment without such prior written consent shall be null and void; provided, however, that the Sellers may assign any or all of their rights and obligations under this Agreement to any of their Affiliates, but only to the extent that such assignment would not result in an impairment of the Buyer’s rights under this Agreement.

(訳)本契約書及び本契約書に基づく権利義務については、その全部であるか一部であるかに拘わらず、また法律の規定によるかその他の理由によるかに拘わらず、他方当事者の事前の文書による同意がある場合を除き、譲渡したり委任したりすることができない。他方当事者の文書による事前同意がない譲渡については無効とする。但し、売主は、本契約上の買主の権利を侵害しない範囲において、その関連会社に対して本契約上の権利または義務の全部または一部を譲渡することができる。

組織再編行為

契約により生じた権利の譲渡は個別の債権の譲渡として考えられますので、Assignment条項に抵触することは明確ですので、事前に相手方当事者の同意を得る必要があります。これに対して事業譲渡や会社分割、合併、企業買収が行われる場合は、Assignment条項に抵触するかどうかを個別に検討することが必要となります。例えば、事業譲渡が行われる場合は契約上の地位の移転になり、Assignment条項に基づき、事前に相手方当事者の了解を得る必要があります。合併や会社分割がなされる場合は、組織上の行為であり包括的に権利義務の承継が生じる場合ですが、契約上の地位が他の法人格に移転する点からはAssignment条項に抵触し、事前に相手方当事者の同意を得る必要があると考えられます。これに対して株式譲渡の方法により会社の支配権が移転する場合は、会社の法人格は同一人に帰属しますので、形式的には契約上の地位の譲渡には該当せず、Assignment条項に抵触しないと考えられます。

Change of Control条項

日本の会社がM&Aを行う場合には、デューデリジェンスにおいて、外国との契約内容をチェックし、Change of Control条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が存在しないかを確認し、どの契約に基づき、誰に対して、どのような同意を得る必要があるのかを弁護士が一覧表にまとめます。M&Aにおける基本合意が締結されたのち、会社はChange of Control条項のある外国の契約相手にコンタクトをとり、ディールの内容を説明して個別に了解を取り付ける必要があります。Change of Control条項は厳密には、会社の支配権の移転(オーナーシップの移転)がある場合に、相手方当事者の了解を得るというものですので、顕密にはAssignment条項とは異なります。但し、株式譲渡によりM&Aが行われる場合であっても、契約の相手方からすれば、Assignmentと同様の状況にあると考えられる可能性もあります。そこで、株式譲渡によるM&Aが行われる場合にも、Assignmentと同様の状況にあると考え、念のために相手方当事者の同意を得ておく必要があると考えられることが多くあります。この意味で、Assignment条項が実質的にChange of Control条項の役割をはたしていないかどうかを確認する必要があります。

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