Waiver(権利放棄)について教えてください

Waiver(権利放棄条項)とは

契約当事者の一方が契約上有している権利を行使しない場合、そのような権利不行使の事実が度重なるなど一定の事情があると、禁反言(estoppel)などを理由として、権利を放棄したものとみなされ、本来認められるはずの権利行使が認められない場合があります。そのような理論のもとで、当事者の一方が権利行使をしなかった場合に、相手方からの、権利行使をしなかった当事者に対する安易な権利放棄または喪失の主張を防ぐために、権利放棄条項(no waiver)を定めておくことになります。例えば、契約の相手方が契約条項に違反すると、契約に基づいて、相手方に対して一定の請求等を行うことができる権利がもう一方の契約の当事者に与えられます。その場合に、請求権等を有する側が、例えば1回目の違反だからということで相手方に対して請求権等を行使しなかったが、2回目の相手方の違反の際には請求権等を行使したところ、相手方が、1回目の違反の際の請求権等の不行使によって、請求権等を有する側は将来の違反に対する請求権等を放棄したものであるなどと主張することが考えられます。そのような相手方の主張を許さいないということを示すところに権利放棄条項を置く意味があります。

Doctrine of lachesとの関係

英米法の概念では、Doctrine of lachesという概念があります。Doctrine of lachesはEstoppelの一部で、権利の存在を知っていながら、不合理に権利行使を遅滞し、相手方当事者に対して損害をもたらすような場合には、権利行使を怠った当事者の権利は消滅してしまい、権利行使ができなくなるとされています。そこで、このような考えを取らないことを契約書に明確にしておく意味があることになります。
 

Waiver(権利放棄条項)のサンプル - 1

A waiver by a party hereto of any particular provision hereof shall not be deemed to constitute a waiver in the future of the same or any other provisions of this Agreement.

(訳)本契約の当事者の一方が本契約の特定の条項について権利の放棄をしたとしても、これは、同一条項についての将来の権利、又は本契約上の他の規定に関する権利を放棄したものとはみなされない。

Waiver(権利放棄条項)のサンプル - 2

No failure on the part of a Party to exercise any rights, powers or privileges under this Agreement or under any instrument executed pursuant thereto, shall operate as a waiver. No single or partial exercise of any right shall preclude further exercise of that right or the exercise of any other right. All rights and remedies granted herein shall be in addition to other rights and remedies to which the Parties may be entitled. No waiver of any of the provisions hereof shall be effective unless in writing and signed by the Party providing such waiver. No waiver shall be deemed a continuing waiver, or a waiver in respect of any breach or default, whether similar or different in nature, unless expressly so stated in writing.

(訳)本契約または本契約に関連して締結された契約書に基づく権利、権限、権益を当事者の一方が行使しなかったとしても、権利の放棄とはみなさない。単一の又は部分的な権利行使については、その権利の残りの部分についての権利行使またはその他の権利の行使を排除するものではない。本契約書に基づき与えられている全ての権利及び救済手段は当事者に与えられている権利や救済手段に付加されるものである。本契約条項の放棄は、かかる権利放棄を行う当事者が文書によりサインしたものでなければ効力を生じない。どのような権利放棄についても、文書により明確に記載がなされている場合を除き、同一の性質であるか異なる性質であるかに拘わらず、継続的な権利放棄とはみなされず、契約違反又は債務不履行についての権利放棄とはみなされない。
 

権利放棄の方法

上記の例では、権利放棄は文書によらなければならないことを明確にしています。これによって口頭による権利放棄はないことが明確化されます。

No waiver of any of the provisions hereof shall be effective unless in writing and signed by the Party providing such waiver. (訳)本契約条項の放棄は、かかる権利放棄を行う当事者が文書によりサインしたものでなければ効力を生じない。

権利の不行使が権利放棄とはならないこと

上記の例では、積極的に権利放棄の意思表示をしなければ、権利放棄が発生しないことを明確にしています。例えば相手方の債務不履行について数か月の間、債務不履行責任の追及をしなかったところ、権利行使を怠ることで、権利を放棄したと言われると困ります。そこで、消極的に権利行使を怠っただけでは権利放棄にならず、権利放棄とみなされるためには、積極的に権利放棄の意思表示をしなければならないことを明確化しています。

No failure on the part of a Party to exercise any rights, powers or privileges under this Agreement or under any instrument executed pursuant thereto, shall operate as a waiver. (訳)本契約または本契約に関連して締結された契約書に基づく権利、権限、権益を当事者の一方が行使しなかったとしても、権利の放棄とはみなさない。

The failure of any party to require the performance of any term or obligation of this Agreement, or the waiver by any party of any breach of this Agreement, shall not prevent any subsequent enforcement of such term or obligation or be deemed a waiver of any subsequent breach.(訳)当事者の一方が、本契約の条項又は義務の履行を求める権利の行使を怠り、又は本契約の違反についての当事者のいずれかが権利の放棄を行ったとしても、かかる条項又は義務を将来執行することを妨げることはなく、また将来の権利を放棄したものとはみなされない。

部分的権利放棄は一般的な権利の放棄とはならないこと

上記の例では、単一の又は部分的な権利放棄は、一般的権利の放棄とはみなされず、他の権利行使を妨げないことを明確にしています。

No single or partial exercise of any right shall preclude further exercise of that right or the exercise of any other right. (訳)単一の又は部分的な権利行使については、その権利の残りの部分についての権利行使またはその他の権利の行使を排除するものではない。

他の表現としては次のようなものもあります。

A party's failure or neglect to enforce any of its rights under this Agreement will not be deemed to be a waiver of that or any other of its rights.(訳)本契約書に基づく権利の不行使又は執行を行わなかったとこは、その権利や執行力を放棄した者とはみなされず、本契約のその他の権利を放棄したものとはみなされない。

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