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最低販売数量の条件を避けるにはどうすればいいですか

英文販売代理店契約における最低販売数量の提案

外国の会社の販売店になっている場合に、外国の会社から最低販売数量(又は最低購入数量)の提案がなされることがあります。日本企業としては、外国の会社から提案された最低販売数量(又は最低購入数量)の提案に対してどのように対応すべきかが問題となります。最低販売数量とは、定められた期間(通常は1年間)に販売しなければならない最低数量であり、これを達成できない場合は、何らかのペナルティが課せられることになります。同様に、最低購入数量とは、販売代理店である日本企業が定められた期間(通常は1年間)において最低でも購入しなければならない数量をいいます。

最低販売数量の提案

英文の販売代理店契約書の提案の中で、最低販売数量(又は最低購入数量)についての記載がなされることがあります。最低販売数量(又は最低購入数量)の記載について、どのように定めなければならないかという決まりはありません。一般的に使われている契約条項のサンプルは次の通りです。販売代理店としては、最低販売数量について合意するとしても、その数量自体が適切であり、十分に達成できるものであるかどうかを慎重に検討する必要があります。

The minimum amounts of sales of the Products that Distributor has to achieve in each fiscal year during the term of Agreement Year is USD100,000.

(訳)本契約の期間中における各会計年度に達成しなければならない販売代理店の製品の最低売上高は、100,000 米ドルとする。

(解説)このサンプルは、最低販売数量について端的に記載した契約条項です。販売代理店としては、年間10万ドルの販売を行うことが厳しいと考える場合は、最低販売数量を5万ドルとするようカウンタープロポーザルを出したり、将来協議により変更できる余地を残しておくようにする必要があります。

最低購入数量の提案

英文販売代理店契約書の提案の中で、最低購入数量について記載されていることがあります。最低購入数量の記載方法について定まったものがあるわけではありません。次の例はサンプルになります。

Company guarantees that it shall purchase a minimum of USD10,000 in each year during the term of this Agreement.

(訳)会社は、本契約書の期間中、毎年少なくとも1万ドルの購入をすることを保証する。

(解説)最低購入数量が販売代理店の責任として規定されている場合は、それを達成できなかった場合は、販売代理店の契約違反になります。従って、この契約条項を受け入れる場合は、契約違反の場合にどのようなサンクション(制裁)が生じるのかを吟味し、そのリスクを十分に考慮した上で契約条項を承諾する必要があります。

メーカーの側で具体的な最低販売数量を決定できる場合

最低販売数量や最低購入数量について契約書の中で具体的に記載して提案される場合が多くあります。

The Company has the right to set a minimum sales amount for the Distributor. If the Company sets a minimum sales amount for the Distributor, the Distributor shall maintain the sales amount set forth by the Company.

(訳)会社(メーカー又は卸売会社)は、販売代理店の最低販売数量を決定する権利を有する。もし会社が最低販売数量を定めた場合は、販売代理店は会社が定めた販売数量を維持するようにするものとする。

(解説)上記のサンプルは、いくらの金額を最低販売数量とするかをメーカー(又は卸し会社)の側で自由に決められる内容となっており、販売代理店にとっては極めて不都合な内容になります。契約条件を一方的に決められるような契約書にサインするのは極めて危険と言えます。販売代理店の側としては、このような契約条項については修正するよう提案する必要があります。また、契約条項の修正が認められない場合は、契約を解除するか、契約を締結しないという選択肢を検討せざるを得ません。

売上目標(sales target)が定められている場合

最低販売数量(又は最低購入数量)の代わりに、売上目標や購入目標など、一定の目標が示されることがあります。言葉からすれば、目標であり、それに違反したからと言って責任を問われるわけではないと安心されるかもしれません。しかし、目標を達成できなかった場合にどのようなサンクション(制裁)や不利益があるのかを慎重に確認する必要があります。例えば、目標に未達の場合は、一定の補償金を支払うようになっていたり、仕入価格やマージンの面で不利益を受けるような規定になっている場合がありますので注意が必要です。売上目標については、本文に記載されることもありますが、将来の変更を見越して別紙に記載される形がとられることもあります。

The annual minimum sales target shall be specified on Schedule 1 hereof.

(訳)年間の売上目標は、本契約書の別紙1に記載のとおりである。

The Parties shall separately agree in writing on the minimum target amount for Distributor to purchase the Products from Supplier during each fiscal year, which shall be reviewed and adjusted by the Parties for every fiscal year based on good-faith discussions between the Parties.

(訳)両当事者は、別途、書面により、各会計年度において販売店がサプライヤーから購入する本商品について、最低目標を合意するものとし、最低目標は、会計年度ごとに、両当事者の誠実な協議によって見直され、調整されるものとする。

(解説)最低購入目標の条項の最後に、毎年協議により見直す旨を追加しました。これにより、最低購入目標は固定的数値ではなく、当事者の協議により決定されるものであること(変動の余地があること)が明確にされました。

売上目標(sales target)未達の場合の制裁

最低販売数量又は最低購入数量についての定めがあるは、万一その最低基準を達成できない場合は様々なサンクション(制裁)が設けられているのが通常です。そのようなサンクション(制裁)としては次のようなものがあります。

  1. 独占的販売代理店から非独占的販売代理店に変更する
  2. 販売代理店が取得できるマージンの率を下げる
  3. 補償金として一定額の金銭を支払う
  4. 最低購入金額と実際の購入金額の差額を支払う
  5. 契約条件の改定について協議する
  6. 契約を終了(解除)する

Supplier grants Distributor exclusive distributorship for the business sectors and countries as designated below, provided Distributor achieve the minimum purchase amount of obligation as provided in Article 3.

(訳)下記の通り、サプライヤーは販売代理店に対して下記のビジネスセクター及び国についての独占的販売権を付与する。但し、第3条に示された最低購入数量を達成することを条件とする。

(解説)最低購入数量を独占的販売権の条件としています。その結果、最低購入数量を達成できなかった場合は独占購入権を失うことになります。

最低販売数量違反が重大な債務不履行となる条項

販売代理店契約については、年度ごとに更新がなされるようになっていますが、継続的な契約関係が続いている場合には、正当な理由がない契約の解除は違法と判断される可能性もあります。特にヨーロッパにおいては代理店保護法が存在し、代理店契約が一方的に解除できないようになっていることもあります。そこで、代理店契約の解除が可能となるようにするために、最低販売数量の未達は重大な債務不履行事由となり、契約解除の正当な理由となることが明示されていることもあります。

The failure of the Distributor to attain such monthly minimum sales shall be deemed a material failure by the Distributor to perform its obligation hereof.

(訳)販売代理店が当該月間販売数量を達成することが出来なかった場合、販売代理店の本契約上の重大な債務不履行とみなされる。

最低販売数量についての交渉

販売代理店の側としては、メーカーや卸の側から言われた最低販売数量や最低購入数量の条項を直ちに受け入れるのではなく、それが本当に達成し得るものであり、リスクを限定できるものかどうかを慎重に検討する必要があります。もし、販売代理店の側で、目標の未達が生じる可能性があると思われる場合には、最低販売数量や最低購入数量に関する条項自体を削除するか、その目標数量を十分に余裕のある数量に減少させるなどの交渉を行う必要があります。また、最低販売数量や最低購入数量の規定は、それに違反した場合の制裁条項と密接に関係しています。例えば、最低販売数量に未達の場合にはすぐに独占的代理店の資格を失うと規定されている場合や、約束された金銭に到達するよう補償金を支払う内容になっていたり、契約上の債務不履行に該当し、損害賠償責任や契約解除などの法的効果を伴う場合などです。相手方との契約交渉においては、最低販売数量や最低購入数量の未達の場合に生じる効果を和らげることで、リスクを減少させる(ミニマイズする)という方法も考えられます。契約書の全体をきちんと把握したうえで、対応方針について検討する必要があります。

栗林総合法律事務所での解決事例

  1. オーストラリアの会社から販売代理店の年間最低販売額を年間1億円以上とするよう要求されていたところ、日本の代理店での販売能力に鑑み、最低販売価格は5000万円としてもらいたい旨の提案を行いました。その後オーストラリアの会社と日本の会社との間で協議がなされ、最終的に最低販売価格を6000万円とすることで合意にいたりました。
  2. アメリカの会社から日本の販売代理店に対して、最低購入数量(年間1億円)の提示があり、最低購入数量に満たない場合には、契約を解除できる旨の契約条項の提案がありました。当方からは、2年連続で最低購入数量(年間1億円)を達成できない場合に契約が解除できるように契約条項の修正を申し入れ、この修正案を認めてもらうことができました。これにより、仮に1年間最低購入数量の目標を達成できない場合でも、翌年度に最低購入数量を達成した場合は契約解除ができないことになりますので、日本の販売代理店にとっては契約時解除のリスクを大幅に低減することが可能となりました。
  3. 上記の事例において、2年間連続で最低購入数量の未達であった場合に、直ちに解除するのではなく、当事者間で協議を行い、協議の結果解決に至らない場合に解除できるというように契約条項の訂正を行い、サプライヤーからも承諾を得ることが出来ました。実体的規定だけでなく、手続き的規定についても影響を緩和する方策について検討しました。
  4. シンガポールの会社が日本の会社の販売代理店となっているケースで、シンガポールの会社が最低購入数量を達成できない場合に、日本の会社の選択により、独占的販売代理店から非独占的販売代理店に格下げするという内容になっていたところ、いくつかの顧客についてはもともとシンガポールの会社の顧客であるから、仮に非独占的販売代理店になるとしても、もともとシンガポールの会社の顧客であった販売先については、引き続き独占的なものとするよう契約条項を修正しました。日本の会社からも承諾を得ています。
  5. 日本の会社がアメリカの会社の販売代理店であったところ、日本の会社が最低購入価格を達成できない場合は、非独占契約にするとされていたところ、日本の会社が不足する購入分(実際にはアメリカの会社の利益相当分)を金銭で補填する場合には、非独占的販売代理店への変更ができないようにする内容の修正を提案し、受け入れてもらうことが出来ました。

栗林総合法律事務所のサービス

栗林総合法律事務所では、会社の担当者様と一緒になって契約条項のリスク分析を行い、依頼者様にとって好ましい修正案を提案いたします。また、修正案については、英文で契約条項の案文を作成し、相手方当事者に提案いたします。ケースによっては、依頼者の代理人として、契約条項についての協議・交渉を行います。かかる協議・交渉については英語で行われます。英語による販売代理店契約やライセンス契約を締結する際に、最低購入数量の定めについて協議・検討される場合には、栗林総合法律事務所にご相談ください。

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