受託者は、債務不履行があった場合に通常の損害賠償に応じる気持ちがあったとしても、会社が倒産してしまうような多額の損害賠償のリスクまで引き受けたとは考えていないことが多いと思います。反対に委託者の側としては、受託者の債務不履行により生じた損害であるので、それは債務不履行を行った受託者が賠償すべきものだと考えている可能性も十分にあります。このような場合に、損害賠償について何らの取り決めもしていない場合には、過失相殺の可能性はあるとしても、債務不履行と相当因果関係にある損害について賠償責任を負わざるを得ないというのが原則となります。もし受託者の側において、損害賠償責任を限定したいと考えるのであれば、受託者の側は英文業務委託契約書の中に損害賠償を制限する項目を挿入するよう提案する必要があります。損害賠償の制限とは、契約の当事者のいずれかが債務不履行を行った際に、他方当事者に対して賠償する損害の額ないし範囲について制限を設けることです。英語では、limitation of liabilityといいます。このような損害賠償の制限も、適切なリスクの分担という意味では合理性のある規定であると考えられます。
IN NO EVENT WILL COMPANY OR CONSULTANT BE LIABLE FOR ANY SPECIAL, INCIDENTAL, PUNITIVE OR CONSEQUENTIAL DAMAGES OF ANY KIND IN CONNECTION WITH THIS AGREEMENT, EVEN IF COMPANY OR CONSULTANT HAS BEEN INFORMED IN ADVANCE OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES.
Consultant will not be liable to the Client for any direct or indirect loss or damages, or loss of business, profit, income, accruals, production or opportunity whatsoever arising in any circumstance in connection with this Agreement, except for such loss is primarily caused by their respective gross negligence, willful default, fraud or in circumstances where liability may not be so excluded or limited by law.
Consultant, its officers, directors, and employees will not be liable to the Company for any consequential or indirect loss or damages, or loss of business, profit, income arising in any circumstance in connection with this service, except for such loss is primarily caused by their respective gross negligence, intentional or willful misconduct, or fraud. Consultant’s and such aforesaid person’s aggregate liability for any and all loss incurred or suffered by the Company that is in any way caused by or arising from the service provided by any or all them hereunder will be limited to the amount of fees paid to them for such service.
The aggregate amount of the indemnifiable losses due to a breach of warranties or representations shall not exceed USD100,000 in this Agreement. Notwithstanding the foregoing, the limits on liability set forth in this Section shall not apply in the event of any fraud, willful misconduct or intentional misrepresentation.
Consultant shall not be liable for any such loss or damages incurred or suffered if, within twelve months after the date on which the cause of action arose, such of them who is alleged to be in liable for the loss or damage have neither been served with any written notice of claim for such loss or damages nor have any proceedings been commenced in respect of such claim.
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業務委託契約における損害賠償制限条項とは
目次
業務委託契約の種類
外国企業から一定の業務を受託し、報酬を受領する場合には、英語による業務委託契約書(英文業務委託契約書)を作成することが多いと思われます。受託する業務については、単純な請負業務であることもあれば、弁護士や公認会計士など専門家(プロフェッショナル)が業務を受託する場合もあります。受託する業務の種類や、委託者と受託者の関係も様々です。そこで、英語による業務委託契約書(英文業務委託契約書)についても次のような様々な名前で呼ばれることがあります。
業務委託契約における損害の発生
業務委託契約は、委託者から委託のあった一定の業務を受託者が遂行し、委託者が受託者に対して報酬を支払う契約です。単純な請負作業のこともありますが、多くの場合においてプロフェッショナルである専門家に対して業務を委託したり、コンサルタントなどに業務を委託するものであり、その結果は委託者にとって重大な影響を及ぼすことがあります。例えば、コンピュータシステムの開発を委託したところ、完成されたシステムに重大な欠陥があり、受託者の業務がストップしてしまったような場合には、委託費用の何倍もの損害が生じることが推測されます。
業務委託契約における損害の分担
受託者は、債務不履行があった場合に通常の損害賠償に応じる気持ちがあったとしても、会社が倒産してしまうような多額の損害賠償のリスクまで引き受けたとは考えていないことが多いと思います。反対に委託者の側としては、受託者の債務不履行により生じた損害であるので、それは債務不履行を行った受託者が賠償すべきものだと考えている可能性も十分にあります。このような場合に、損害賠償について何らの取り決めもしていない場合には、過失相殺の可能性はあるとしても、債務不履行と相当因果関係にある損害について賠償責任を負わざるを得ないというのが原則となります。もし受託者の側において、損害賠償責任を限定したいと考えるのであれば、受託者の側は英文業務委託契約書の中に損害賠償を制限する項目を挿入するよう提案する必要があります。損害賠償の制限とは、契約の当事者のいずれかが債務不履行を行った際に、他方当事者に対して賠償する損害の額ないし範囲について制限を設けることです。英語では、limitation of liabilityといいます。このような損害賠償の制限も、適切なリスクの分担という意味では合理性のある規定であると考えられます。
業務委託契約における損害の種類
債務不履行に基づく損害としては、直接損害、間接損害、結果損害、特別損害、偶発損害、懲罰的損害賠償などがあります。また、債務不履行による損害賠償に関連するものとして不法行為(tort)による損害賠償、衡平法による損害賠償(equitable liability)などがあります。損害賠償の制限はこれらの損害の賠償について、金額または賠償対象となる損害の範囲について制限を設けることです。なお、懲罰的損害賠償や衡平法による損害賠償は英米法による概念であり、日本法にこのような規定があるわけではありません。
交渉上の優位性を利用する場合
上記の通り、損害賠償の額について制限を設けることは合理的な場合もあります。一方で、業務を受託した大企業の側が自らの損害賠償責任の限度額を一定の範囲に限定してしまった場合、中小企業の側で十分な賠償を受けられないということも生じてきます。そこで、損害賠償の制限に関する条項については、当事者の自由な意思により合意されたものである限り有効であるとし、大企業などが契約上の優位性を利用して不当に相手方に負担を押し付けるような場合には、無効とされる可能性があります。契約締結時において、損害賠償の制限を設けることを自由な意思により決定することが出来たかどうかが判断基準となります。
社会通念に反する場合
損害賠償の制限に関する条項も、社会通念上受け入れられないような不公平な取り決めである場合には、公序良俗違反として契約条項が無効となる可能性があります。例えば、損害賠償の金額が100億円であるにもかかわらず、賠償額の上限を1億円とする場合には、実際の損害額と、賠償額の上限との間に著しい乖離が生じ、このような極端な制限については社会通念に照らし適切ではないと判断される可能性があります。賠償額の制限を設ける際には、実際に生じる可能性のある損害額を考慮し、社会的にも妥当な範囲での制限を行うことを検討する必要があります。
損害賠償責任を制限する方法
業務委託契約にける損害賠償を制限する方法としては、①賠償の対象となる損害の種類を限定する方法、②故意または重過失がある場合にのみ損害賠償責任を負い、軽過失の場合は損害賠償責任を負わないとする方法、③損害賠償の額を制限する方法、④損害賠償の請求方法や請求期間を制限する方法などが考えられます。
損害賠償の対象となる損害の種類を限定する方法
IN NO EVENT WILL COMPANY OR CONSULTANT BE LIABLE FOR ANY SPECIAL, INCIDENTAL, PUNITIVE OR CONSEQUENTIAL DAMAGES OF ANY KIND IN CONNECTION WITH THIS AGREEMENT, EVEN IF COMPANY OR CONSULTANT HAS BEEN INFORMED IN ADVANCE OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES.
(訳)会社またはコンサルタントは、たとえ会社またはコンサルタントがそのような損害の可能性について事前に知らされていたとしても、本契約に関連するいかなる種類の特別損害、偶発的損害、懲罰的または結果的損害に対しても責任を負わないものとする。
(解説)損害賠償の対象となる損害の種類を制限する損害賠償の制限条項のもっとも一般的な形です。アメリカの法律においては、損害賠償の制限条項がある場合、相手方当事者が予期せぬ不利益を被る可能性があるので、相手方当事者が損害賠償の制限に関する条項を明確に認識できるよう当該条項についてすべて大文字で書くことを要求され、小文字で記載された損害賠償の制限に関する契約条項は無効とすると定めている場合があります。そこで、アメリカ人の弁護士が損害賠償の制限に関するドラフトを作成する場合には、全ての文字を大文字で記載するのが一般的です。この契約条項に記載されているように、結果損害、偶発損害、特別損害、懲罰的損害については、賠償責任を負わないとすることも公序良俗違反にはならないと考えられます。但し、当事者の一方が弱い立場にあるような場合(例えば一般の消費者)について力の強い事業者の側が一方的に損害賠償責任の制限を定めることは違法と判断される可能性があります。その結果、この条項が有効となるか違法となるかは状況に応じて判断されるということになります。
損害賠償の対象を故意または重過失の場合に限る方法
Consultant will not be liable to the Client for any direct or indirect loss or damages, or loss of business, profit, income, accruals, production or opportunity whatsoever arising in any circumstance in connection with this Agreement, except for such loss is primarily caused by their respective gross negligence, willful default, fraud or in circumstances where liability may not be so excluded or limited by law.
(訳)コンサルタントは、本契約に関連して発生した直接的または間接的な損失もしくは損害、または事業、利益、収入、成果、生産または機会の損失について、それぞれについて故意または重過失の場合、詐欺の場合、または主として法律により責任を排除もしくは制限することができない状況において生じた場合を除き、依頼者に対して責任を負わないものとする。
(解説)損害賠償の対象となるのを、債務者(業務の受託者)による故意または重過失による場合に限るとする契約条項です。通常の軽過失の場合には、受託者は責任を負わないことになります。重過失というのは、故意と匹敵するような重大な過失がある場合をいいます。意図的に損害を生じさせたような場合でなければ、損害賠償責任を負いませんということを明示するものです。ただし、依頼者の側からすれば、一切の損害賠償を受けられないということで、依頼者の側の不利益が大きすぎると感じられることも多いと思います。
損害賠償の額を制限する条項
Consultant, its officers, directors, and employees will not be liable to the Company for any consequential or indirect loss or damages, or loss of business, profit, income arising in any circumstance in connection with this service, except for such loss is primarily caused by their respective gross negligence, intentional or willful misconduct, or fraud. Consultant’s and such aforesaid person’s aggregate liability for any and all loss incurred or suffered by the Company that is in any way caused by or arising from the service provided by any or all them hereunder will be limited to the amount of fees paid to them for such service.
(訳)コンサルタント、その役員、取締役、および従業員は、その重大な過失、意図的または故意の不正行為、または詐欺による場合を除き、本サービスに関連して生じた結果損害、間接損害、ビジネス上の損害、利益又は収益の損失について会社に対して責任を負わない。これらの者によって提供される全てのサービスから生じる会社に生じた又は会社が被った全ての損害に対するコンサルタント及び上記の者の損害賠償の上限額は当該サービスに関連して支払われた報酬の額に限定されるものとする。
(解説)債務不履行により発生する損害については、直接的な損害の他、間接損害や結果損害もあります。また、当該債務不履行がなければ得られたであろうビジネス上の利益や機会損失など、債務不履行と相当因果関係にある損害とみなされる可能性も考えられます。しかし、ビジネス上の利益の損失や機会損失については将来生じる利益の喪失であり、結果が不透明であるのに加え、金額が著しく大きくなってしまう可能性があります。そこで、これらの損害については、当事者の合意によって債務不履行責任を負わないと定めたとしても、必ずしも公序良俗違反になるとは言えません。また、損害賠償の額の上限額を契約に基づき支払われた報酬の額に限定するということも合理的であると考えられます。損害賠償をゼロか100かという形で極端に決めるのではなく、ある程度将来の損害を推測し、損害賠償責任の適切な分担を行うという観点からは適切な規定であるとも考えられます。但し、国によってはこのような規定は委託者の権利を著しく制限するもので、公序良俗に反すると判断される可能性がないわけではありません。そこで、損害賠償の上限額を、報酬の範囲内ではなく、報酬の2倍とか、3倍と記載することもあります。
損害賠償の上限額を記載する方法
The aggregate amount of the indemnifiable losses due to a breach of warranties or representations shall not exceed USD100,000 in this Agreement. Notwithstanding the foregoing, the limits on liability set forth in this Section shall not apply in the event of any fraud, willful misconduct or intentional misrepresentation.
(訳)本契約における保証表明違反に基づく損害賠償の合計金額は10万ドルを超えないものとする。上記に拘わらず、本条による制限については、詐欺、故意による債務不履行又は意図的な表明違反については適用にならない。
(解説)この契約条項は、損害賠償の上限額について具体的に定める内容となっています。当事者間で上限額について合意された場合には、その金額を契約書の中に書き込むことはあり得ます。但し、上限額について合意された場合であっても、意図的な債務不履行などの場合には、損害賠償額の制限条項が適用になりませんので、そのことを明示しています。
損害賠償の責任請求期間を制限する方法
Consultant shall not be liable for any such loss or damages incurred or suffered if, within twelve months after the date on which the cause of action arose, such of them who is alleged to be in liable for the loss or damage have neither been served with any written notice of claim for such loss or damages nor have any proceedings been commenced in respect of such claim.
(訳)損害賠償の原因が生じた日から12か月以内に、当該損失または損害について責任を負う者が、当該損失または損害に関する請求の書面による通知を受領せず、当該請求に関していかなる手続きも開始されていない場合、コンサルタントは、発生または被る当該損失または損害について責任を負わないものとする。
(解説)損害の原因が発生してから12か月以内に請求がなされないと、損害賠償責任をおいませんということを定めるものです。損害賠償の対象となる損害や、損害賠償の金額を制限するのではなく、損害賠償の請求方法を制限し、結果として賠償請求されるケースを制限しようとするものです。この規定は、損害賠償の対象となる損害や、損害賠償の金額を制限する条項と両立するものですので、両方の条項を入れておくということも考えられます。
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