公開日:2023/04/12 最終更新日:2023/04/12 Consideration(約因)について教えてください。 目次Consideration(約因)とは契約成立におけるConsideration(約因)の必要性Consideration(約因)の内容Consideration(約因)の契約条項の例1Consideration(約因)の契約条項の例2Consideration(約因)の契約条項の例3 Consideration(約因)とは 英文契約書の中では、Considerationという言葉がよく出てきます。英文契約書の中で使われるConsiderationについては、「対価」という意味で使われる場合と、「約因」という意味で使われる場合の二つの場面があります。「対価」というのは、文字通り商品やサービスに対して支払われる金銭のことで、「物(サービス)の対価として、買主は売主にいくらのお金を支払います。」というような形で記載されます。一方「約因」としてのConsiderationは英米法に特有の概念になります。契約締結に入る当事者の譲歩を基礎づける何らかの経済的対価という意味になります。当事者としては何らかの経済的利益を受けることができるので、契約に拘束される(法的義務を負う)ことについて同意するのであり、当事者の一方が何らの経済的利益も受けられないような契約については不公平な契約であり無効であると判断されます。 契約成立におけるConsideration(約因)の必要性 日本の場合は、契約が成立するためには、申込(Offer)と承諾(Acceptance)があればいいことになります。このような意思の合致があることを権利義務が生じる根拠と考えています。これに対し英米法では、申込(Offer)と承諾(Acceptance)に加えて、Consideration(約因)の提供があることが契約の要素とされています。その結果、英米法の契約書ではWhereas条項の最後の部分に必ずConsideration(約因)に関する記述が加えられることになります。 Consideration(約因)の内容 英米法では、Consideration(約因)が契約の要素であり、Consideration(約因)のない契約は無効とされています。しかし、Consideration(約因)の概念についても次第に形骸化し、現在では、何らかの対価が支払われることが必要ですが、その対価がお互いに釣り合うものであることが求められるわけではありません。従って、1億円の家を買うのに、100万円を支払うというような内容であってもConsideration(約因)はあるということになります。また、Consideration(約因)があるというためには、金銭的な価値の提供があることが求められるわけではありません。従って、物やサービスの提供に対して、非金銭的価値の提供があるような場合であっても、Consideration(約因)はあるということになります。 Consideration(約因)の契約条項の例1 In consideration of the agreements, provisions and covenants herein contained, the parties hereto hereby agree as follows: (訳)本契約書に含まれる契約、条項、および誓約を約因として、本契約の当事者は以下の通り合意する。 (解説)「herein」は法律用語ですが、一つの単語となり、「本契約書の中に」という意味になります。Hereは本契約書を指すことになります。 Consideration(約因)の契約条項の例2 In consideration of the premises above and the mutual covenants and agreements contained herein and other good and valuable consideration, the receipt and sufficiency of which are hereby acknowledged, the parties agree as follows: (訳)上記の説明、及びその受領と十分性が本契約書においても十分に確認されている本契約書に含まれる相互の誓約と合意、およびその他の良質で価値のある対価を約因として、両当事者は次のとおり合意する。 (解説)premisesは、「議論の前提、根拠」、「建物の敷地」、「契約書の前文」など様々な意味がありますが、ここでは、Whereas条項に記載された説明事項という意味になります。Covenantは、「約束、誓約」という意味です。「その受領と十分性が十分に確認されている」という内容を含むことで、Considerationに問題があるというような議論を生じさせる余地をなくすることになります。 Consideration(約因)の契約条項の例3 In consideration of the performance of the services rendered under this Agreement and payment for such services, the parties agree to the followings: (訳)本契約に基づいて提供されるサービスの履行およびかかるサービスに対する対価の支払いを約因として、両当事者は以下に同意するものとします。 (解説)本契約書により一方当事者が他方当事者に対してサービスの提供を行い、それに対して他方当事者が対価を支払うことで双方相手方に対してなにがしかの経済的価値を提供していることになります。そこで、それそれの当事者が相手方当事者に対して提供する経済価値をConsideration(約因)として契約を締結するということを明確にしています。 執筆者情報 栗林 勉 Tsutomu Kuribayashi 栗林総合法律事務所の代表であり、米国ニューヨーク州の弁護士資格を有する国際弁護士。国内企業法務の他、国際的紛争の解決や国際取引に関する契約書の作成、中小企業の海外進出支援などの業務を幅広く扱っている。 英文契約のQ&A一覧に戻る
公開日:
最終更新日:
Consideration(約因)について教えてください。
目次
Consideration(約因)とは
英文契約書の中では、Considerationという言葉がよく出てきます。英文契約書の中で使われるConsiderationについては、「対価」という意味で使われる場合と、「約因」という意味で使われる場合の二つの場面があります。「対価」というのは、文字通り商品やサービスに対して支払われる金銭のことで、「物(サービス)の対価として、買主は売主にいくらのお金を支払います。」というような形で記載されます。一方「約因」としてのConsiderationは英米法に特有の概念になります。契約締結に入る当事者の譲歩を基礎づける何らかの経済的対価という意味になります。当事者としては何らかの経済的利益を受けることができるので、契約に拘束される(法的義務を負う)ことについて同意するのであり、当事者の一方が何らの経済的利益も受けられないような契約については不公平な契約であり無効であると判断されます。
契約成立におけるConsideration(約因)の必要性
日本の場合は、契約が成立するためには、申込(Offer)と承諾(Acceptance)があればいいことになります。このような意思の合致があることを権利義務が生じる根拠と考えています。これに対し英米法では、申込(Offer)と承諾(Acceptance)に加えて、Consideration(約因)の提供があることが契約の要素とされています。その結果、英米法の契約書ではWhereas条項の最後の部分に必ずConsideration(約因)に関する記述が加えられることになります。
Consideration(約因)の内容
英米法では、Consideration(約因)が契約の要素であり、Consideration(約因)のない契約は無効とされています。しかし、Consideration(約因)の概念についても次第に形骸化し、現在では、何らかの対価が支払われることが必要ですが、その対価がお互いに釣り合うものであることが求められるわけではありません。従って、1億円の家を買うのに、100万円を支払うというような内容であってもConsideration(約因)はあるということになります。また、Consideration(約因)があるというためには、金銭的な価値の提供があることが求められるわけではありません。従って、物やサービスの提供に対して、非金銭的価値の提供があるような場合であっても、Consideration(約因)はあるということになります。
Consideration(約因)の契約条項の例1
In consideration of the agreements, provisions and covenants herein contained, the parties hereto hereby agree as follows:
(訳)本契約書に含まれる契約、条項、および誓約を約因として、本契約の当事者は以下の通り合意する。
(解説)「herein」は法律用語ですが、一つの単語となり、「本契約書の中に」という意味になります。Hereは本契約書を指すことになります。
Consideration(約因)の契約条項の例2
In consideration of the premises above and the mutual covenants and agreements contained herein and other good and valuable consideration, the receipt and sufficiency of which are hereby acknowledged, the parties agree as follows:
(訳)上記の説明、及びその受領と十分性が本契約書においても十分に確認されている本契約書に含まれる相互の誓約と合意、およびその他の良質で価値のある対価を約因として、両当事者は次のとおり合意する。
(解説)premisesは、「議論の前提、根拠」、「建物の敷地」、「契約書の前文」など様々な意味がありますが、ここでは、Whereas条項に記載された説明事項という意味になります。Covenantは、「約束、誓約」という意味です。「その受領と十分性が十分に確認されている」という内容を含むことで、Considerationに問題があるというような議論を生じさせる余地をなくすることになります。
Consideration(約因)の契約条項の例3
In consideration of the performance of the services rendered under this Agreement and payment for such services, the parties agree to the followings:
(訳)本契約に基づいて提供されるサービスの履行およびかかるサービスに対する対価の支払いを約因として、両当事者は以下に同意するものとします。
(解説)本契約書により一方当事者が他方当事者に対してサービスの提供を行い、それに対して他方当事者が対価を支払うことで双方相手方に対してなにがしかの経済的価値を提供していることになります。そこで、それそれの当事者が相手方当事者に対して提供する経済価値をConsideration(約因)として契約を締結するということを明確にしています。
執筆者情報
栗林 勉
Tsutomu Kuribayashi
栗林総合法律事務所の代表であり、米国ニューヨーク州の弁護士資格を有する国際弁護士。国内企業法務の他、国際的紛争の解決や国際取引に関する契約書の作成、中小企業の海外進出支援などの業務を幅広く扱っている。
英文契約のQ&A一覧に戻る