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誠意をもって協議するという契約条項について教えてください。

誠実協議条項の拘束力

英文契約書の作成を行う際に、依頼者から「誠意をもって協議する」という契約文言を入れて欲しいと依頼されることがあります。多くの日本語の契約書では、契約書の最後の部分に、「本契約について争いが生じた場合は、甲乙互いに誠意をもって協議する。」というような条項が入れられることがあります。この契約条項は、あくまで誠実に協議をすることを書いただけであり、多くの事例においては、誠実に協議をしていないので契約違反であるというような形で強制執行できるわけではありません。しかし、日本人の中では、契約書に誠実協議義務が書いてあるので、相手方は誠実に協議をする義務を負担しているのではないかと考えている人も多いようです。そこで、例えば契約書の中で代金が1億円と定められている場合において、1億円は高いので5000万円に値下げして欲しいと考えるような場合に、誠実協議義務があるのであるから売主は代金減額交渉に応じるべきだと主張されることがあります。しかし、このような主張については裁判所ではなかなか認められません。誠実協議条項を理由に契約条項の変更を交渉すべき義務があるとは解釈されないからです。但し、英文契約書の中に記載された誠実協議義務について、単なる道義的義務を定めたものであり、一切の法的義務を構成するものではないと解釈されるわけではありません。もし、当事者のいずれかから正当な協議の申し入れがなされた場合において、協議に全く応じなかったような場合には、誠実協議義務に違反すると解釈される可能性がないわけではありません。法的義務の有無は、そのような背景となる事情を斟酌して判断されることになります。

good faith negotiationとは

英文契約書の中では、「誠実な協議」については、good faith negotiation(誠実な交渉)とか、good faith consultation(誠実な協議)という言葉が使われます。いずれも「合理的なレベルの誠実さをもって協議・交渉を行う。」という意味になります。英文契約書の中で出てくるgood faithを、「善意の」と訳すこともあります。日本の法律用語では、「善意の」とは、当事者が前提となる事実を知っていたかどうかという客観的要素として判断されますが、英文契約書の中で使われる「善意の」という意味は、文字通り「誠実に」、「合理的に」という主観的意味を含むものとして用いられています。

good faith negotiationのサンプル1

Any matters not stipulated in this Agreement shall be resolved in good faith by each other.

(訳)本契約書に定めのない事項については、互いに誠意をもって解決する。

good faith negotiationのサンプル2

Any disputes between the parties on the interpretation and/or performance of this Agreement shall be settled by the parties through good faith negotiation.

(訳)本契約書の解釈又は履行に関する当事者間の全ての紛争については、当事者間の誠実な協議により解決されるものとする。

good faith negotiationのサンプル3

Both parties agree that, should any dispute arise in connection with this agreement, the parties shall make a good faith consultation to solve the difference or dispute before the filing of any action.

(訳)本契約書に関して何らかの紛争が生じた場合は、訴訟提起の前に、互いに相違や紛争を解決できるよう誠意を持った協議を行うべきことについて、両当事者は合意する。

good faith negotiationのサンプル4

The Parties shall separately agree in writing on the minimum target amount (“Minimum Target”) for Distributor to purchase the Products from Supplier during each fiscal year, which shall be reviewed and adjusted by the Parties for every fiscal year based on good-faith discussions between the Parties.

(訳)両当事者は、別途、書面により、各会計年度において販売店がサプライヤーから購入する本商品について、最低購入目標(「最低目標」という)を合意するものとし、最低目標は、会計年度ごとに、両当事者の誠意ある協議に基づき見直され、調整されるものとする。

執筆者情報

栗林 勉

Tsutomu Kuribayashi

栗林総合法律事務所の代表であり、米国ニューヨーク州の弁護士資格を有する国際弁護士。国内企業法務の他、国際的紛争の解決や国際取引に関する契約書の作成、中小企業の海外進出支援などの業務を幅広く扱っている。

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