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punitive damages(懲罰的損害賠償)について教えてください。

punitive damages(懲罰的損害賠償)とは

英文契約書の中でよく出てくるpunitive damagesとは、懲罰的損害賠償という意味です。不法行為を行った人や会社に対して、再度不法行為を行わないようにさせるために、懲罰的な観点から、制裁的に巨額の賠償を命じることを言います。

Punitive damages(懲罰的損害賠償)制度の目的

通常の民事訴訟における損害賠償制度の目的は被害者に生じた損害の補填を行わせることにあります。従って、被害者(多くの場合は裁判の原告)に生じた損害上の賠償が認められることはありません。これに対してpunitive damages(懲罰的損害賠償)の制度は、民事的な損害賠償制度の目的を超えて、制裁的な観点から、実際に生じた損害以上の多額の賠償を認め、加害者が将来同様の不法行為を行うことを抑止しようとすることにあります。このような将来の不法行為の抑止は、本来的には国が行う行政手続きや刑事手続きの中で行うべきことです。これを民事手続きの中で行おうとするのがpunitive damages(懲罰的損害賠償)の制度になります。

Punitive damages(懲罰的損害賠償)の例

Punitive damages(懲罰的損害賠償)が認められたアメリカの有名な事例として、マクドナルド・コーヒー事件があります。1992年ニューメキシコでドライブしていた女性がマクドナルドのドライブスルーでコーヒーを買いました。コーヒーにミルクと砂糖を入れようとしていた時にコーヒーがこぼれ、高齢の女性(当時79歳)が膝に火傷を負うことになりました。陪審裁判の結果、コーヒーの温度が摂氏85度で、家庭用のコーヒーメーカーの温度(摂氏72度)よりも高かったこと、コーヒーを渡す際に十分な注意をしていなかったことなどを理由に270万ドル(現在の為替で3億6000万円くらい)の懲罰賠償金の支払いが命じられることになりました。但し、その後の和解交渉の結果、最終的には60万ドル(8000万円くらい)で和解しているようです。

Punitive damages(懲罰的損害賠償)における損害額の認定

Punitive damages(懲罰的損害賠償)の制度は、将来における不法行為の抑止が目的ですので、賠償金の支払いによって加害者がそれなりの痛みを感じ、将来において二度と同様の不法行為が発生しないよう対策を講じるものでなければならないことになります。いくらいの賠償金を支払えば加害者が痛みを感じるかは、加害者の会社の規模などで異なってきます。そこで、punitive damages(懲罰的損害賠償)における賠償金の額を決定する際には、加害者の売上をベースに考え、加害者の売上の何日分を損害賠償金とするというような形で定められることになります。但し、損害賠償額の算定について確定的な計算式があるわけではありません。実際には、被害者に生じた損害の3倍を賠償額とするとしたり、被害者が支払う弁護士報酬の額の3倍を賠償額とするなど、様々な計算方法が用いられています。

Exemplary damagesとは

Punitive damagesと同様の言葉としてexemplary damagesという言葉があります。これも懲罰的観点から、多額の損害賠償を認める制度です。Exemplaryという言葉の意味は「模範的な」という意味ですが「模範的損害賠償」と訳したのでは、意味が不明になってしまいます。Exemplary damagesも懲罰的損害賠償と訳されることが多いようです。

compensatory damages(補填的損害賠償)との違い

Punitive damages(懲罰的)が懲罰的な観点から多額の損害賠償を認めるのに対し、伝統的な意味で、被害者に生じた損害の補填を行う場合の賠償については、compensatory damagesと言われます。損害の補填を目的とする損害賠償制度という意味です。

punitive damages(懲罰的損害賠償)判決の日本での効力

日本の法制度にはpunitive damages(懲罰的損害賠償)の制度はありませんので、日本の裁判所において懲罰的損害賠償が認められることはありません。外国で下された判決を日本で執行する際には、日本の裁判所において外国判決の承認決定を得る必要があります。日本の裁判所は外国判決が日本の公序良俗に反すると判断する場合は、外国判決の承認を行いませんので、仮に外国判決が日本の公序良俗に反すると判断される場合には、外国で下された判決を日本国内で執行することはできないことになります。1997年7月11日、日本の最高裁判所は、カリフォルニア州の裁判所で認められた懲罰的損害賠償金について、日本の公序良俗に反していると判断しています。その結果、日本ではpunitive damagesの判決を執行できないというのが実務の考え方になっています。

punitive damagesに関する契約書のサンプル条項1

英文契約書の中では、punitive damages(懲罰的損害賠償)による損害金の支払は認められないというような形で記載される場合がほとんどです。

(サンプル)Neither party to this Agreement shall be liable to any other party hereto for claims for punitive, special, exemplary or incidental damages, regardless of whether a claim is based on contract, tort, strict liability, or any other legal or equitable principle.

(訳)本契約のいずれの当事者も、請求が契約、不法行為、厳格責任、またはその他の法的または衡平法上の原則に基づいているかどうかに関係なく、懲罰的、特別、または偶発的な損害に対する請求について、本契約の他の当事者に対して責任を負わないものとします。

punitive damagesに関する契約書のサンプル条項2

(サンプル)Each party to this Agreement agrees that it shall not have a remedy of punitive, special, exemplary, indirect or consequential damages against any other party to this Agreement in connection with any claim or dispute arising hereunder.

(訳)本契約の各当事者は、本契約に基づいて発生する請求または紛争に関連して、本契約の他の当事者に対して、懲罰的、特別、間接的、または結果的な損害について救済を受けないことに同意するものとします。

執筆者情報

栗林 勉

Tsutomu Kuribayashi

栗林総合法律事務所の代表であり、米国ニューヨーク州の弁護士資格を有する国際弁護士。国内企業法務の他、国際的紛争の解決や国際取引に関する契約書の作成、中小企業の海外進出支援などの業務を幅広く扱っている。

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